ラードの海に溺れて

めし、酒、本、映画

瓶内熟成の豆板醤

 昨日食っためしの話をする。

 写真はない。

 

 キャベツを1/4玉、ピーマン2つ、長ネギを斜めに切ったやつを炒めて別皿に取る。

 冷凍挽き肉を解凍して、傷だらけのティファールにぶちこみ、すたみな源たれ(青森のクソうまい焼肉たれ的な)をドバドバ入れて炒める。

 火が通ったら先述の野菜の山をぶち込む。

 人生が嫌になると、冷蔵庫内の掃除をしたくなる。解るか?解らなくてもいい。これはわたしの人生の話だ。

 味が濃いものはだいたい米に載せちまえばいい。人は皆、物事を複雑にしやがる。本当はこれぐらいシンプルであればいいんだ。

 

 ところで、ティファールは傷だらけでなくてもいいが、鉄フライパンなんて洒落たものが家にある男は嫌いだ。フライパンの話となると、こういう話をついしたくなってしまう。わたしはかつて宝島社が出していたスキレット同梱ムックを買ったが、ガステーブルのSiセンサーに殺された。鉄鍋の類を使う上でまず最初必要になる『シーズニング』という「手続き」においては、鉄鍋をカンカン(チンチンというオノマトペもある。好みでよい)に熱して表面の薬剤を焼き切る必要がある。しかしこれは、Siセンサーと呼ばれる家庭用コンロにはつきものの温度センサーの存在で、なかなかこれがままならないのだった。

 カセットコンロにはSiセンサーがないから、使い始めだけカセットコンロを使えばよいことに気づいたのは、そこから半月後だった。時すでに遅し。スキレットは棚の奥深くに眠ってしまっていた。

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 鉄のフライパンを常用している男は、少なくともシーズニングという面倒な手続きを乗り越えるだけの愛を何かに対して持てる男ということだ。結婚するにあたっては適当だろう。あとは小煩くないかどうかが問題だ。

 これは完全にわたしの偏見だが、鉄のフライパンを常用している男がめんどくさい訳がない。気をつけてほしい。何を?

 

 閑話休題

 

 ちなみにこれは好みの問題なんだが、わたしはこの炒め物に、横浜中華街の萬福臨って食材屋で買った豆板醤(松印)をぶち込む。そら豆と唐辛子と塩だけで作られた、唯一の豆板醤だ。

 松竹梅と熟成期間によってランク分けがされている。松と梅だけだったような気がするが、まあいいだろう。

 松印は、15年熟成させた本物の豆板醤だ。15年の熟成期間を経ても、よく出回っている砂糖入り豆板醤のような優しさはない。そうだ、あれには砂糖が入っている。家にある豆板醤の裏を見てみるがいい。ピーシェン豆板醤を使っている?この話はおしまいだ。

 

 話が脱線した。

 

 この豆板醤(松印)は辛味が強い。慣れないうちは、普段使っている甘めの豆板醤と組み合わせて使うのが無難だろう。いくらか辛味がマイルドになるし、味に深みが出る。こうして作った麻婆豆腐はうまい。自分の腕が上がったような気にさえなる。クックドゥも悪くはないが、退屈だ。そう、数年に渡って働き続けた居酒屋バイトのような。この前NewsPickか何かで読んだんだが、人には転職すべきタイミングがあり、それは今の仕事が退屈に感じられた時だという。クックドゥからの脱却を図るべきタイミングは画面の前にいる君にもいつか現れるはずなのだ。

 

 話が脱線した。

 

 クックドゥの麻婆豆腐にちょい足しするだけでもレベルが上がる。そうだ、これでいい。いろいろ御託を並べたが、豆板醤やら甜麺醤やらを揃えるのが面倒になったわたしも、最近はクックドゥの麻婆豆腐にちょい足しする方法に落ち着いてしまっている。成長ばかり求められる環境も、体力が続けばいいが、そうでないなら息苦しくなるばかりだ。人には休息が必要だ。

 

 また脱線した。

 

 豆板醤(松印)は買った後も瓶内熟成が続く。購入時には、レジを打つマダムから、清潔なスプーンでたまに瓶底からかき混ぜるよう言われる。

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 自宅にある豆板醤だ。カメラロールにこの前撮った写真が残っていた。

 誤解のないように伝えておくと、わたしは賞味期限や消費期限には比較的うるさいほうだ。

 そして製造元は一切推奨していないことを念頭に置いてほしいのだが、申し訳ない。これは今朝も使ってしまった。

 瓶内熟成が進み切って、ここまで来るとだいぶ甘みが出てくる。うまい。うまいんだが、自宅に来た人に食わせる訳にはいかない。人道的な問題を孕んでくるからだ。重ねて申し上げるが、製造元は一切推奨していない。

 これはあくまでも自分の自堕落さが生んだひとつの偶然であるから、真似するべきではないし、買ったばかりでもこの豆板醤は本当にうまい。

 

 萬福臨の柱となる事業は卸であり、小売にはあまり力を入れていない。数年前までは公式のWebページもあったが、消滅してしまった。故にこの店の豆板醤を通販で買うことは不可能と言っていい。実店舗はちゃんとあるので安心してほしい。

 しかし、公式の通販があった頃でさえ、松印は店頭のみの販売だったようだ。熟成年数を経たうまい豆板醤はもはや資源の一つと言っても過言ではない。

 横浜中華街に来ることがあったら、絶対にこの店に立ち寄るべきだ。胡麻油ラー油も推せる。

https://www.chinatown.or.jp/shop/%25e8%2590%25ac%25e7%25a6%258f%25e8%2587%25a8/

 

 横浜中華街、令和になってからまだ行っていない。中華街には製麺所が点在しており、中には店頭で若干数だけ販売している製麺所もある。

 わたしは以前そのうちの一つの店で麺を購入したが、応対してくれた中国人の背の高い若いお兄さんがめちゃくちゃ口調がぶっきらぼうで、すごくいいキャラをしていたのを覚えている。彼は元気にしているだろうか。

 

 

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