バイスタンダー経験からの雑感
先日、バイスタンダーとして現場に居合わせた。その時のことをざっくりまとめておく。
バイスタンダーとは、ざっくり言うと「救急の現場に居合わせた人・発見した人」のこと。
この雑感について、特定の誰かを指して糾弾するなどの意図は一切含まれてないことを予め明記しておく。
月1〜2でシガーバーに行って葉巻を吸うのが楽しみなんだけど、今回はその帰りのことだった。
今日は帰り道にある施設の通路で倒れている男性がおり、それを若者たちが取り囲んでいて、そのうちの1人がAEDを持ってきていた。
心停止の現場だった。
私は以前の職場で指導教育責任者として、また応急手当普及員として、心肺蘇生法の指導をしたりもしていたけど、実のところCPA(心停止)の現場でバイスタンダーになった経験はほとんどなかった。
結論から言うと、私がいたから特別どうこう、といったことはない。
その場に居合わせた若者は体育系の大学の学生たちで、第一発見者。目撃のある心停止だった。彼らの対処は的確だった。
かつて大学の授業で心肺蘇生法を習ったきりだと彼らは言っていたけれど、話を聞く限り、倒れた男性を見て、
・観察と評価
(話を聞いてみると、彼らは用語こそ曖昧だったが、死戦期呼吸にも気付いていたようだった)
・迅速な通報
・胸骨圧迫
・AEDの搬送
これらをしっかりこなしていた。
バイスタンダーとしては本当に申し分ない。こう言ってはなんだが、ここまでやってダメなら誰がやっても同じ結果だったろうと思う。
彼らの判断と勇気については表彰される機会があればいいのにと思う。
とまれ、現場には彼らよりも更にうろ覚えのCPRで事態に対処しようとする警備員と、先述した学生たち、状況を報告するのに精一杯の地域課の警察官と入り乱れており、状況を整理するために介入した。
以下に自分への反省点も含めた雑感を示す。
順番は一切考慮されていないし、内容について整理もしていないから記述を当てにすべきではない。
※救命講習の受講歴がない人は是非受講してほしい。受講歴がなくとも、119番に連絡すれば指示を仰ぐこともできる。AEDがあるなら、自動アナウンスに任せてもよい。
- CPAに陥った人そのものは救急病院に勤務している時に何度も見てきたので、状況の理解に支障はなかった。勝手に身体が動いたのでよかった。
- BLS Provider取得以降、仕事用の鞄にポケットマスクを常備していたのが功を奏した。フェイスシールドと比較してより効果的な人工呼吸が実施できた。
- 状況を確認してすぐに仕事用鞄からポケットマスクを取りだし、同封されているニトリルグローブを着用した上で介入した。最初は医療関係者の類と思われたのか、その場での介入と主導権の獲得はスムーズに進んだ。
- ポケットマスクの組み立てはやはり、慣れてないと若干もたつく。今回はバイスタンダーが複数人いたため、タイムラグは極小化できたが、常備している人は組み立てに習熟したほうがよい。
- 警備隊員は持ち歩いている(?)フェイスシールドで人工呼吸をしていたが、逆止弁が患者の口の奥に入り込んでおり、また頭部後屈顎先挙上法がしっかり出来ていなかったため、うまく息が入っていなかった。
- 頭部後屈顎先挙上法を生体にやるのは思ったより難しい。
- 胸骨圧迫中に、「ボグッ」というぐぐもった感触があった。骨が折れたのかもしれない。胸骨圧迫は続行した。
- 胸骨圧迫のリズムが各々でばらつきがあり、質の低い、早過ぎる胸骨圧迫を行なってしまっている人もいた。その時は声を出してカウントしてあげたり、手拍子や肩を叩くなどしてリズムを作ってあげたほうが、良質な胸骨圧迫を継続して行うことができるため、そのようにした。
- 使用後のポケットマスクやニトリルグローブについては、学生たちの着用分も含めビニール袋にまとめ、東消救急隊の中隊長に感染性廃棄物として処分をお願いした。
- AEDによる心電図の解析は6~7回あったが、除細動は最初の3回のみだった。除細動を経ても意識は回復しなかったため、AEDがショック不要と判断した後も率先して胸骨圧迫を行った。
- 救急隊現着時も同様、引き継ぎの瀬戸際まで胸骨圧迫を行った。
- 臨場した所轄の専務員から身元の確認と状況説明を求められた。亡くなったら連絡するかもしれないとのこと。
- 臨場した警察官が私とめっちゃご近所さんだった。駅ですれ違ってもそっとしておいてね、とのこと。
- そんな長時間やったわけでもないのに、暫くの間腕の違和感が取れなかった。
- バイスタンダーCPRの現場では、統制が重要なファクターであると認識した。目指す目的は一つとはいえ、場を回す人間がいないと何もかもがとっ散らかる。
- 学生たちが臨場した所轄の専務員に話しているのを聞いて思ったが、やはり「冷汗・顔色の悪さ・呼吸苦」は分かりやすい心原性心停止の兆候だ。
消防のAED講習や普通救命講習では、「AEDがショック不要と判断した場合の対処」を教えていない/口頭で伝えていても、シミュレーションまではしていない場合が往々にしてある。
10〜11に関しては、講習ではなかなかフォローしきれないポイントであり、このあたりを把握している人間が率先して行動する必要がある。
※今回は目撃された心停止な上、現行のG2015では人工呼吸は省略可能としているが、可能ならやったほうがよい。
胸骨圧迫の目的は、平たく言ってしまえば、脳に酸素を含んだ血液を送り込み続けることにある。
この場合は当てはまらないが、海やプールや保育園や幼稚園で特に起こりやすい呼吸原性の心停止の場合、人工呼吸が出来ないと致命的。単に「人工呼吸は省略可能」というのは不正確。
フェイスシールドは逆止弁の周りから裂けるリスクがあるし、傷病者の口の中に入り込んでしまう場合もあることが今回のケースで分かった。
そしてポケットマスクの効果の高さを(心理的な抵抗の低さも含めて)実感したが、医療従事者でもなければ、これは消防の講習で補講(実施団体や、その日の講師によってバラつきがある)として体験するか、AHA BLS Providerなどを受講していないと使用が難しい。習熟していない人が使っても隙間から空気が漏れるだけだ。
ポケットマスクは購入して3年ほど経つが、よもや使うタイミングが来るとは。持っててよかった。
一軒目を出た後はバーをはしごするつもりだったが、上記の出来事のあとはスタバで抹茶クリームフラペチーノを飲んで帰った。